研修志望動機・学修内容・成果/感想・今後の取組み・これからの希望者へのアドバイスなど
私は、大学病院で漢方医学教育と臨床に携わる50代の医師です。今回、「富山大学で、どのように漢方教育と日常臨床を行い、漢方人材を育成しているのか」を知りたいと思い、研修させていただきました。学修内容は、午前が①輪読会、②病棟診察、③外来陪席、午後が、④教授回診、⑥漢方講義、⑦学生発表、⑧抄読会、⑨症例検討会などでした。8時からの輪読会では、湯本求真の「皇漢医学」を学生が音読後に、指導医が解説を行い、毎日違う教員が担当されていました。難解な内容を噛み砕いて板書形式で解説され、非常に勉強になる内容でした。8時30分からは入院患者の診察が行われ、主治医と指導医により治療方針が話し合われ、煎じ薬を用いた治療が行われていました。9時からの外来陪席では、貝沼茂三郎教授および藤本誠准教授外来に陪席させていただきました。医学生や専攻医と一緒に、舌診、脈診、腹診を行い、実際に診断した内容を口頭で述べ、その後、貝沼教授が診察し解説するという実践的なトレーニングでした。驚いたのは、学生に対して、ほぼ全患者の診察を行わせていることでした(しかも、楽しい雰囲気で!)。これにより、学生は実践的に診断技術を身に着けられ、非常に高い満足を感じ、漢方への愛着を深めていました。また、多くの診療科からの紹介患者が漢方外来を受診されており、各診療科との連携がしっかりなされていました。午後の漢方講義では、医師国家試験に出題された漢方の問題を解説していました。学生が事前に配布された問題の解答とその判断理由を述べた後、教員が解説をしていました。学生発表では、漢方に関連した研究発表が行われ、漢方関連の英語論文の抄読会も行われていました。木曜日の教授回診では、入院患者の治療方針の決定までのプロセスを学びました。回診前のカンファレンスでは、各専門領域出身の医師達が、西洋医学的検査の結果を踏まえ、西洋医学的観点と漢方医学的観点の両視点から病態診断に関する見解を述べ、活発な討論が行われていました。貝沼教授は、それらを集約し、患者診察を行った上で、総合診断を行い、漢方薬を決定していました。そこでは、西洋医学と漢方医学が高いレベルで融合した医療が実践されていました。また、富山大学には、和漢医薬学総合研究所があり、民族薬物資料館の見学もさせていただきました。世界中から収集された薬草や鉱物などが所狭しと展示され、施設職員の方から解説もしていただき、生薬の品質により香りや味が全く違うことも学びました。また、薬剤部では、煎じ薬の調剤を見学させていただきました。患者の状態に合わせて生薬の煎じ方が異なっていました。薬剤師が丁寧に煎じておられ、医薬連携が図られていました。最終日には、医局説明会に参加させていただき、和気あいあいとした雰囲気の中、たくさんの学生が集まってきており、漢方に対する興味を持つ学生がこれほど多いのかと驚きました。この度の研修では、充実した漢方教育と日常臨床が良い雰囲気の中で行われ、漢方人材を育成するシステムを直に見させていただきました。この度、研修で得た内容を、今後の教育と臨床に活かして行きたいと思います。貝沼教授を始め、多くの医局員の先生方、事務員の方には大変お世話になりました。この場をお借りして、お礼申し上げます。