研修志望動機・学修内容・成果/感想・今後の取組み・これからの希望者へのアドバイスなど
私は循環器内科が専門で,これまで大学病院・関連病院や一般クリニックで診療してきました.社会の高齢化が進む中,多数の併存疾患を有する患者のニーズは広範囲で,中には専門診療科の治療後も自覚症状に苦しむケースは少なくありませんでした.日々の診療の中,漢方薬の可能性に目が向いたのは必然とも言えます.メーカー主催の勉強会は有用でしたが,我流での診療は行き詰まりを見せ,系統だった研修の必要性を痛感しました.初診患者の経過と方剤の選定過程を学ぶには最低3ヶ月間の研修期間が必要であろうと考え,研修期間が柔軟な千葉大学和漢診療科に打診したところ快諾していただきました.日本漢方(古方派)の本流で学びたいとの思いもありました. 研修は,1)毎日朝8時からの抄読会(「皇帝内経」素問,矢数道明著「漢方治療百話」)2)並木先生,平崎先生の外来陪席と初診患者診療,ポリクリ学生指導,3)龍先生・大橋先生の指導による入院患者診療,回診時プレゼンテーション,カンファレンス参加,4)和漢薬煎じ・丸薬作成実習,鍼灸見学,4)漢方研究会や臨床研究への参加等豊富な内容でした.
3ヶ月の研修を通じて書籍や講演会では得られない多くのことを学びました.四診の詳細について丁寧なフィードバックを受けながら習得できました.受診患者のほとんどは専門診療科での治療に満足されておらず,期待を持ち自らあるいは主治医より紹介され,その約8割が当院での和漢診療に満足との調査結果に驚きました.初診患者は早くて数ヶ月で軽快,長いもので数年経過しており,電子カルテの記述を遡ることも勉強になりました.陰陽虚実・寒熱・表裏・気血水・五臓の関係を診療に生かす過程,難治性病態に対する柔軟な和漢診療学的視点の転換,臨床経過に応じた証の再評価と随証治療の重要性を学びました.現在,多くの診療科で漢方治療が普及しつつありますが,治療抵抗例における大学病院和漢診療科の重要性は今後益々増していくものと考えられます.また,生活指導(食事やストレス解消)を重視すること,長い経過と精神的ストレスを有する患者に対する各先生に共通する診療姿勢にも感銘を受けました.
全期間を通して研修に集中できるよう医局全体に温かくサポートしていただきました.3ヶ月間日本漢方のトップランナーに囲まれ,疑問をすぐに解消できる環境に身を置かせていただいたことはこの上ない喜びです.今後は,私の所属病院や関連病院で和漢診療の適用に努め,地域の漢方医療の充実に微力ながら関わりたいと思います.西洋医学的アプローチの限界を感じたり,病名漢方から一歩抜け出し複雑な病態に取り組みたい先生にとって素晴らしい研修環境であると思います.