研究助成・業績表彰

漢方医学教育研究助成・研究業績<採択交付者一覧>

2024年度「研究助成」 採択決定者一覧

2024年度「漢方医学教育研究助成」採択決定者一覧
一般研究助成:5件/13件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「Near-peer teaching (NPT)による漢⽅医学教育の実践と教育効果の検討」 ⼤分⼤学医学部
感染予防医学講座
教授
⼩林 隆志
Near-peer teaching (NPT)とは直近の先輩が講師として授業を⾏う形態で、学⽣(near-peer learner)にとって親しみやすく質問しやすい学習環境を提供すると同時に、教える側にも多くの学びや気づきを与えるものである。本学医学科の4年次⽣で⾏う東洋医学の講義および研究室配属の実習においてNPTを導⼊し漢⽅医学教育への効果を検討する。具体的には本学サークルの東洋医学研究会に所属する学部学⽣ならびに本学附属病院の漢⽅外来に興味をもつ研修医が講師として授業を⾏い、その効果を学習到達度およびアンケートによる回答により評価する。これにより漢⽅医学の教育者および研究者の育成を図る。
2 「全人的医療としての漢⽅医学の有用性の体験的気づきを通して、医学生が医療者と協働して開発する教育ビデオ」 関西医科⼤学医学部
心療内科学講座
教授
蓮尾 英明
本学での「全人的医療コース」では、前半は心身医学の講義を行い、後半にその治療法の一つとして漢方医学を教育している。このコース終了後の医学生有志を対象として、心身医学を実践する初診陪席で心理社会的因子と関連した難治的症候の病態を評価すると同時に、漢方医学的な評価を包括的に組み合わせた全人的医療の実践を経験して、再診陪席の過程でその変化の体験的気づきを得てもらい、この気づきをもとにした全人的医療における漢方医学の教育ビデオを医療者と協働して開発する。この教育ビデオは、翌年の漢方医学の反転授業の資料として活用する。漢方医学への関心の高まりなどを半構造化面接などの混合分析的手法を用いて評価する。
3 「鍼灸分野の実習およびBed Side Learning教材の開発と検証」 福島県立医科⼤学
会津医療センター
附属研究所
漢⽅医学研究室
教授
鈴木 雅雄
本研究は医学部での鍼灸に関する実習およびBSLの新たな教育資料の開発を目的としている。医学部教育において講義に関しては「漢方医学講義テキスト」とモデルスライドが存在している。一方、鍼灸の実習に関する資料は存在しない。従って、各大学で鍼灸の実習教育を行うことが困難な状況である。本研究の計画は、1年目では実習資料のプロトタイプを作成して、鍼灸系教員がBSLの学生を対象に実習を行い、学生の理解度を把握して資料の修正を行う。次年度に修正した資料を基にして鍼灸系教員と漢方系教員がランダムに実習を行い、当該学生の理解度を測定して、漢方系教員でも簡単に使える教育資料の作成を行う。
4 「医学、歯学、看護学、栄養学で共有できる漢方教育教材開発」 鹿児島大学大学院
医歯学総合研究科
地域医療学分野
准教授
網谷 真理恵
現在、医学科だけでなく、薬学科、歯学科、看護学科においてモデル・コア・カリキュラムに和漢薬(漢方薬)について表記されており、卒前教育として漢方を学ぶ機会があることが望ましいが指導者が不足している現状である。一方、臨床現場においては、漢方の対象疾患は幅広く、医師、歯科医師、薬剤、看護師など漢方を通して多職種連携での取り組みを行うことで、疾患概念にとらわれない広い範囲でのケアが必要となる。本研究では、これまでの調査研究でのニーズ評価に基づき、新たに、職種共通で漢方学的治療/介入が有効となる臨床場面の抽出を行い、各学科共通で使うことのできる有用性の高いPBLやロールプレイ課題を作成することを目的とする。
5 「バーチャル患者で学ぶ舌診・望診学習のための教育動画作成
(舌撮影解析システムTIASと生成AIの活用)」
横浜薬科⼤学
薬学部 生薬学研究室
講師
村上 綾
舌診は、書籍など既存の学習ツールでは、習得内容が限定的である。今回、生成AIを用いてバーチャル患者を作成し、目の前で患者の舌を観察しているように学べる、舌診・望診用の教育動画の作成を計画した。バーチャル患者が挺舌する舌は、我々が撮影・集積してきた患者の本物の舌画像であり、主訴や治療に用いた漢方処方などが紐づけされた約1300の舌画像データベースから、学習に最適な病態舌を選定する。学習動画により、舌の歪みや揺れなど特徴的な動きの病態舌を観察できる、舌診に要する時間を感覚的に体感できる、症例演習型で学べる、治療経過の舌所見変化を観察できる、皮膚や表情も観察できるなど、舌診の新しい教育動画作成を目指す。
グループ研究助成:2件/7件
1 「医師臨床研修指導ガイドラインに対応した漢方医学の 初期研修カリキュラムおよび教材のモデル作成」 福島県立医科⼤学
会津医療センター
附属病院
漢⽅医学講座 講師
畝田 一司
現行の医師臨床研修指導ガイドラインには漢方医学の研修について記載がなく、漢方医学の初期研修を普及する上で支障となっている。本研究では、漢方医学教育施設における初期研修の課題を明らかにした上で、研修指導ガイドラインに対応した漢方医学の初期研修カリキュラムおよび教材のモデルを作成する。本研究で作成されたカリキュラム・教材は、研修医と指導医にとって到達目標や学習方略、評価方法が明確であるため、漢方医学の研修環境や診療科を問わず広く活用が期待される。さらに本研究の成果物は、将来的に研修指導ガイドラインに漢方医学を掲載する上での参考資料としても利用が期待される。
2 「医学生を対象とした漢方Webテスト実施の試み」 名古屋⼤学
医学部附属病院
総合診療科 病院教授
佐藤 寿一
私共は漢方医学卒前教育の発展を目的とする日本漢方医学教育協議会(JCKME)を組織し、漢方卒前教育のコア・カリキュラムの目標の策定、方略としての講義スライドや教科書の作成を行ってきた。そして現在学習の評価について取り組んでいる。既に確立されているwebテストシステムを活用して医学生を対象にテストを実施し、各教育機関における学習効果を客観的に検証することを計画中である。JCKMEの中に問題作成委員会およびテスト運営委員会を組織して2025年までにテストを実施し、その後データを抽出し、データマイニング・成績評価・総括を行い、その成果を論文等で公開し、漢方卒前教育のコア・カリキュラムを完成させたい。

2023年度「研究助成」 採択決定者一覧

2023年度「漢方医学教育研究助成」採択決定者一覧
一般研究助成:5件/9件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「漢⽅薬の⽣理機能を理解するための基礎研究室配属実習の構築」 秋田大学大学院
医学系研究科 医学専攻
器官・統合生理学講座
教授
沼田 朋大
医学部学⽣への漢⽅医学教育を促進するため、基礎研究室配属期間に漢⽅薬の⽣理機能を科学的に体験できる実習プログラムを開発する。各学⽣は⽔分調節に関わる漢⽅薬の選別を⾏い、その成分や作⽤メカニズムに関する知識を学ぶ。次に細胞サイズや細胞死解析で⽔分流出⼊作⽤を評価し、実験を通じて効果を検証する。最終的に、学び体験した内容を学内外で発表することで、研究マインドを涵養する。また、発表では、漢⽅薬の処⽅⽅法や適応疾患について紹介することで、臨床的な視点から漢⽅薬の使⽤への理解を深める。このプログラムは学⽣が漢⽅医学における実践的な知識と研究スキルを獲得し、⽣涯学習につながる基盤を築くことを⽬指す。
2 「漢方医学的な問診トレーニング用チャットボットの開発と応用」 東海大学医学部
専門診療学系漢方医学
准教授
野上 達也
漢方医学の教育において、漢方医学的な診察に必要な知識と技術を学習することは非常に重要である。漢方医学的な診察として望診、聞診、問診、切診の四診が行われるが、中でも問診は患者の訴えを傾聴し、漢方医学的な診断に至るための情報を収集する重要なプロセスである。しかしながら、医学生や研修医が漢方医学的な診察を求める患者に対して問診を行う機会は非常に乏しく、漢方医学的診療の実践的なトレーニングを行う上で障壁となっている。そこで今回我々は近年進歩の著しい人工知能技術を用いた「漢方医学的治療を求める模擬患者」の役割を担うチャットボット(自動会話プログラム)を作成し、漢方医学教育に応用し、その教育効果を検証することとした。
3 「漢方医学授業を効率よく学ぶための予習動画製作の試み」 日本歯科大学附属病院
内科
臨床教授
矢久保 修嗣
コロナウイルス感染症対策としてオンライン授業が行われ,スマートフォンなどを使用して学生は授業を受けることに習熟してきている.このシステムを使用して,これから受講するオンサイトの漢方医学の授業に関して,チーム基盤型学習法(TBL)や,課題解決型学習(PBL),シミュレーションなどの授業手法に関する授業前の説明や,学生が興味を惹起し,講義の中でどこが重要事項なのかを理解できるような3分程度の授業予習動画の製作を考えた.学生はこれをWEBからオンラインで授業前に視聴してから,漢方医学の授業に向かうことができる.授業前に短時間の予習動画を視聴する学習システムは,今後の医学教育の分野では有効な手段となることが期待される.
4 「漢方学習のためのボードゲーム(Kampoker)開発」

三重大学医学部附属病院
漢方医学センター
センター長(病院准教授)

髙村 光幸
漢方医学教育において、初学者では漢方処方名が難解で覚えにくい、構成生薬も複雑で、どのような点に留意が必要か記憶しにくいなどという声がよく聞かれる。中級者でも、構成生薬を失念したり、基原植物名称や使用部位などを誤認したりしてしまうこともある。一方、ポーカーや麻雀の役など、ゲームの要素のように繰り返し触れるものに関しては、難解な名称や特性であっても容易に記憶可能なことは周知である。学生や研修医が短時間で気軽に反復使用でき、漢方処方名やその特性、構成生薬などを要素に用いて教材として使えるボードゲームを開発し、さらに英語版、中国版へと発展させ、グローバルに活躍できる研究者を育成する一助としたい。
5 「総合内科診療における臨床推論に漢方薬の運用を組み込んだ卒後研修システムの構築」

埼玉医科大学
総合診療内科
東洋医学科兼担
教授

鈴木 朋子
漢方医学教育研究では、卒前教育に比べ卒後教育には確立されたカリキュラムが存在しない。近年開発が進んでいる漢方卒後教育では、一般的に漢方医学単独で教える教材がメインであるため、学修は研修医の興味によるところが大きく、漢方医学の特色を活かす運用が広く浸透しているとはいえない。日本の伝統医学である漢方を現代医学に十分かつ的確に取り入れるため、現代医学的臨床推論の中に漢方医学を学べるツールを組み込むことが本研究の目的・特徴である。現代医学の中で漢方医学の概念を活かしながら、病名処方に終始することなく、外来診療からHCU管理にまで漢方薬を的確に運用する「病院漢方」の実践を目指すものである。
グループ研究助成:2件/3件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「漢方医学的問診バーチャル患者の開発と医学生の学修効果の検証」 富山大学学術研究部
医学系成人看護学Ⅰ講座
准教授
山田 理絵
患者の主観的な多岐にわたる訴えの丹念な聴取を基本とする漢方医学的問診において,患者の体験を患者の視点に立ち理解するという共感は重要である。近年COVID-19の影響により,漢方臨床実習で医学生が対面で問診を行う機会は減少した。そのため,医学生が安全な学習環境で,いつでも反復練習ができ,かつ共感しながら漢方医学的病態を理解できる問診教材の開発は喫緊の課題である。本研究の目的は①漢方医学的問診で,医学生の共感や漢方医学的病態の理解を深める人工知能を搭載したバーチャル患者を開発し,②医学生をバーチャル患者に問診を行う群と模擬患者に問診を行う群に無作為に割り付け,漢方医学的問診バーチャル患者の検証を行うこととした。
2 「VR(virtual reality)及びMR(mixed reality)を用いた漢方医学OSCE教材及び学修教材の開発」 東京医科歯科大学
大学院医歯学総合研究科
臨床医学教育開発学
教授
山脇 正永
漢方医学の臨床教育・研修は指導医の不足、実習・研修施設の不足などにより、教育・学修環境が十分とは言えない。さらに、学生及び研修医の漢方医学に関する臨床能力(コンピテンス)の到達度評価について検討された報告はほとんどない。本研究は、この課題を解決するために、近年医学教育で活用されつつあるvirtual reality(VR), mixed reality(MR)を用いて、客観的臨床能力試験(OSCE)教材及び学修教材を開発し、オンデマンドで使用できる漢方医学の学修コンテンツを作成し、さらに学生及び研修医の臨床能力評価方法を確立しようというものである。

2022年度「研究助成」 採択決定者一覧

2022年度「漢方医学教育研究助成」採択決定者一覧
一般研究助成:6件/11件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「医学生を対象にした随証治療による漢方処方選択の確立」 弘前大学医学部附属病院
皮膚科
診療講師
皆川 智子
漢方医学で考えられる病態生理:‘証’や‘随証治療’を理解し,実践できるようにするため,弘前大学医学部医学研究科4年生の臨床薬理・和漢薬学講義において,漢方医学の基礎理論(陰陽説,五行説,三陰三陽),漢方医学的診察法(四診:望診,聴診,問診,切診),‘気血水’の所見,寒熱虚実の‘証’の判断について講義する.希望者にはオリジナルの動画とスライドにより事前e-learningを行った後,腹診シュミレーターで実技指導を行い、4年時と5年時にアンケート調査を行い,医学生が随証治療により,適した漢方を選択できるようになることを目指す.
2 「科学的エビデンスを取り入れた鍼灸に関わる医学教育の研究開発」 富山大学附属病院
医療情報・経営戦略部
教授
髙岡 裕
⽇本漢⽅医学教育協議会では、医学教育モデル・コア・カリキュラムに対応した講義スライド提供や『漢⽅医学講義』を出版した。漢⽅の項では臨床薬理的な解説もされており、分⼦細胞⽣物学を学んだ医学⽣が受け⼊れやすい内容である。しかし、鍼灸の項では⾃律神経系を中⼼とする旧来の説明が主で、学⽣が学んできた分⼦細胞⽣物学的な解説は⾮常に乏しい。そこで鍼灸の基礎研究、臨床研究の最新の研究成果を取り⼊れた講義スライドを作成し、申請者が各⼤学(医学部・薬学部)で講義する。そして、講義後の学⽣への授業アンケート調査を基に講義内容をブラッシュアップし、分⼦医学やデータ科学に対応した鍼灸教育の内容を完成させる。
3 「卒後漢方教育への漢方医学eラーニング
〈臨床応用編〉の導入」
東海大学医学部
専門診療学系漢方医学
准教授
中田 佳延
本研究の目的は、漢方医学eラーニングコース〈基礎編〉の発展として、前期あるいは後期研修医が臨床各科で応用できるeラーニングコース〈臨床応用編〉を開発することである。方法は、漢方を応用しやすい臨床12領域を決定した後、各領域における疾患の捉え方、頻用処方と鑑別、症例、確認問題から構成される10~12分のコンテンツを作成し、プロのナレーターによる音声収録を行う。これを既存のサーバーとeラーニングシステムを用い、主に神奈川県内の臨床研修指定病院に勤務する研修医を対象に試験的に導入する。評価は、受講者への受講前後でのアンケート、プレテストおよびポストテストの得点により行う。成果は学会および論文で発表する。
4 「漢⽅医学への学習意欲向上プロセスの探索 〜医学⽣の漢⽅教育×Long COVIDプロジェクトを通して〜」 岡⼭⼤学病院
総合内科・総合診療科
助教
徳増 ⼀樹
COVID-19罹患後症状 (Long COVID) は、主症状が複数かつ多岐にわたり、個別性が⾼く、患者それぞれの⾝体症状を包括的に把握し診療する必要がある。現在⾏っている臨床実習の中で、LongCOVIDの患者を診療することで、医学⽣は包括的に病態をとらえる漢⽅医学の有⽤性に気づき、漢⽅医学への学習意欲が向上していると実感している。しかし、その学習意欲が向上するプロセスは明らかではない。 本研究では、医学⽣がLong COVIDの患者を実際に診療することを軸とした「漢⽅教育×LongCOVIDプロジェクト」を実施し、漢⽅医学への重要性認知、学習意欲向上へつながるプロセスを解明することが⽬的である。
5 「漢方医学に関する診療や教育支援のための証・方剤選択アプリケーションツール開発」 京都府立医科大学
総合医療医学教育学教室
講師
丹羽 文俊
漢方医学の症候や方剤は客観的定量的評価の難しさゆえに理解と浸透が十分進まないのが現状である。方剤選択の最適化を目標とした学習を行なう上で、今回我々は症候から最適な方剤選択をシミュレーションするアプリケーションツールの開発・導入を計画している。このアプリの特筆すべき特徴は、証に対応して選択する方剤の適性を組み合わせ最適化モデルを用いて定量化し(視覚化し)、初学者にも分かりやすくフィードバックできる点にある。実用性や使用効果については臨床や教育の場面でアンケート調査を通じて検証するものとする。このような学習用アプリが実現すれば、漢方医学のさらなる理解と浸透の一助となるものと考える。
6 「教育DXモデルとしての漢⽅医学教育に資する多職種連携教育」 新潟⼤学⼤学院
医⻭学総合研究科
医学教育センター
准教授
河内 泉
本研究は、教育DXモデルとして①漢⽅医学、②多職種連携教育 (IPE),③オンライン教育を統合・推進することにより、新たに漢⽅医学教育に資するオンラインIPEを実践し、その教育効果を検証することを⽬的とする。具体的には、(1) 学修を促進する「漢⽅医学教育に資するIPEプログラム」の構築、(2) オンラインIPEの教育効果のエビデンスの集積、(3) IPEを運営するためのFDの構築、(4) 漢⽅医学教育・IPEに有⽤なデジタル・コンテンツの作成を⾏う。オンラインで運⽤可能な「漢⽅医学に資するIPE」の開発・構築は、組織・国を越えたIPEへ発展する可能性があり、グローバル・医療過疎地域の教育継続への波及が期待される。
グループ研究助成:2件/3件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「Virtual University of Kampo medicine(漢方版の放送大学 )構想と実証実験」 千葉大学医学部附属病院
和漢診療科
診療教授
並木 隆雄
近年、急速に普及したオンライン講義を背景に対面を前提に考えていた「漢方医学の教育」の多くの時間を、e-Learning を含む録画授業やライブ放映で行うことが可能になった。また全国一律で困難であった漢方医学教育を同質に行うことで漢方の国試出題の可能性がある。また、研修医向けの中級以上のコースやさらに専門医レベル以上の次世代の教育者を育てるFaculty developmentを実施できる。この漢方版放送大学ともいえるシステムにより、通年型教育並びに昇級試験を設けることでモチベーションを高める。さらに将来、このシステムを英語教育化することで世界に漢方医学を発信するロールモデルにすることができる。
2 「橈骨脈波の定量的解析データに基づく脈診シミュレータの開発」 東北大学
加齢医学研究所
助教
山田 昭博
漢方医学において脈診は、最も基本的な診察方法のひとつである。脈診では撓骨動脈を触診し、脈の強弱や血管の解剖学的特性など多岐にわたる病態を診察できる手技を習得する必要があるが、脈診を学習できるシミュレータはこれまでにない。我々は脈診手技に注目し、物理的なセンサによりその波形を客観的定量的に診断する「脈診器」の開発を進めてきた。本研究では、脈診器の定量的な解析データをもとに、さまざまな病態の脈波と物理解剖学的特性を再現できる脈診教育用シミュレータの開発を目指す。これにより医学教育過程において、標準的な脈診手技とさまざまな病態を簡便かつ客観性高く学ぶ事ができるトレーニングシステムを提供できる。

2021年度「研究助成」 採択決定者一覧

一般研究助成:3件/7件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「がん支持医療におけるエビデンスに基づいた漢方活用の教育コンテンツ作成と実践」 岡山大学病院
血液・腫瘍内科
助教
西森 久和
2020年11月に日本がんサポーティブケア学会より「がんサポーティブケアのための漢方活用ガイド」が発刊され、がん支持医療における漢方活用の大きな流れが学会として示されたことを背景に、早急な医学教育への導入が必要である。本研究では、医学部の「腫瘍学」の講義における漢方活用の教育コンテンツを作成すること、臨床実習での学生との対面議論で「がん支持療法」を取り上げて漢方の役割を明示する資料を作成すること、そして臨床研修において漢方活用の実践を指導するためのFDコンテンツを作成することで、シームレスな教育と適切な実践を実現する。
2 「漢方講義テキストを用いたチュートリアル漢方教育の設計と知識 定着における検証」 東京大学大学院
医学系研究科老年病学
准教授
小川 純人
漢方医学の教育においてはモデルコアカリキュラムに漢方医学の記載はあるものの、これまで決まった共通のテキストもなく各大学独自の教育が実施されているのが現状である。そこで今回我々は、老年病学のチュートリアル教育の中で、2020年12月に出版された”基本がわかる漢方医学講義”のテキスト(日本漢方医学教育協議会編集/株式会 社羊土社発行)を用いて学生に漢方医学教育を実際に行い、知識定着度・漢方医学への興味の変化・テキストだけでは不十分と感じる内容等、その教育効果を検証することを目的として計画した。
3 「ゲーミフィケーションを利用した漢方医学教育」 奈良県立医科大学
教育開発センター
准教授
若月 幸平
医学科4年を対象とした東洋医学(漢方医学)コースの授業の一部をアクティブラーニング型授業(反転授業を主体とした)とし,学生の主体的な学習を引き出す手段としてゲーミフィケーションを利用した授業設計を行う.授業を実施する際には,漢方に対する知識,印象,感想などが確認できるようなアンケートを授業の前後で実施し,学生の漢方医学に対する知識や意識の変化を確認する.また,漢方を学ぶための15分程度のオンデマンド動画教材を作成し,反転授業の事前学習教材としても活用する.5年もしくは6年次の臨床実習では,実習の一部でゲーミフィケーションによる漢方を題材としたCase-based Lecture (CBL) で実施し,実臨床での漢方の使用を議論する.
グループ研究助成:2件/2件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「漢方医学教育における舌診の習得のためのプログラム構築」 広島大学病院
総合診療科
助教
河原 章浩
漢方医学診察は、診断に必要な情報を得るために必要である。しかしその習得は比較的難しく、経験を積んだ漢方医の外来に陪席が必要である。漢方医学診察に習熟した医師が不在の施設では、研修医や医学生が身に着けることは難しい。また、COVID-19パンデミックにより、実習が困難となっている。ここで、舌診は、患者さんに触れることなく得られる情報であるうえに、色情報と形態を観察するため、ある程度はパターンを学習することができる。本研究では、患者さんの舌画像を収集することによって、深層学習をし、経験を積んだ漢方医の診断との相関を解析し、基本的な舌診の診断を決定できるようにし、舌診を習得できるシステムを構築する。
2 「アクティブラーニングによる症例検討モデル授業ガイド開発研究」 富山大学附属病院
和漢診療科
特命教授
貝沼 茂三郎
本研究では、これまでの我々の漢方医学教育の経験と実績を発展させて、医学教育学の知見を活用しながらアクティブラーニングによる双方向の症例検討モデル授業ガイド開発研究をすることである。少人数によるアクティブラーニング形式による双方向の症例検討会の良い点としては学生の理解度を見ながら検討会をすすめることができるが、その分教員の漢方医学に関する理解の深さが求められる。そこで我々がこれまで行ってきたアクティブラーニングによる双方向による症例検討から教員向けのモデル授業ガイドを作成し、それらを実践してもらうことでその有用性について検証する。

2020年度「漢方医学教育研究助成」採択決定者一覧

一般研究助成:4件/7件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「バーチャルリアリティ技術を応用した腹診学習コンテンツの作成と実践」 東海大学医学部
専門診療学系漢方医学
准教授
野上 達也
漢方医学の教育において、腹診の知識・技術を学習することは非常に重要である。これまで学生や研修医などの初学者が腹診を修得する方法として、実際の患者の診察を経 験する以外には、腹診シミュレーターを用いるなどの方法がこれまでは行われてきたが、シミュレーターのコストなどいくつかの問題があり十分に普及していないのが実情 である。そこで今回我々は、近年発達の著しいバーチャルリアリティ(VR)の技術を用いて、仮想現実空間の中で模擬患者を診察し、特に腹診についてVR用触覚デバイス (GeoMagic TouchやEXOSなど)を応用して学習できるコンテンツを作成し、それを用いた教育を実際に学生や研修医に行い、その教育効果を検証することを計画した。
2 「クラウド型教育支援サービスによる均一化された漢方教育の拡充」 旭川医科大学
産婦人科
教授
加藤 育民
医学の進歩に伴い⻄洋医学の学習範囲が多様化する中で、漢方教育に十分な時間が確保できないのが現状である。教育者である専門医や指導医も限られており、広範な学習 者を賄うことは困難である。漢方治療の必要性を認識した医師からも学習機会の確保が望まれているが、漢方教育の機会を得ることは地方在住であるほど困難となる。 本研究では、クラウド型教育支援サービスとハンズオン学習を併用することで、医学生の講義・実習の機会不足を補うのみならず、北海道の東洋医学会指定研修施設として 医師等の医療スタッフに対しても漢方教育の均一化と機会の拡充をはかる。本研究の成果は、今後の漢方医学教育の向上と標準化につながるものである。
3 「漢方医学に対する多職種連携教育システムの構築」 大阪医科大学
医学教育センター
講師(副センタ―⻑)
駒澤 伸泰
漢方薬処方において、⻄洋医薬との併用、食事内容との相互作用、内服時の生活注意点など多視点からの注意が必要である。ゆえに、効果的かつ安全な薬剤医療安全には、 医師・薬剤師・看護師を始めとする多職種協働が必須である。漢方医学の多職種協働が期待されているが、必ずしも円滑には進んでいない。漢方医学における多職種協働に は、その基盤となる適切な多職種連携教育が必要である。 漢方薬は⻄洋薬と併用して処方されることも多く、効果と安全性、危機管理に関する網羅的教育をProblem-based learning and discussionやシミュレーターを用いて構築 する。低学年から高学年に至る段階的な漢方医学多職種連携教育システム構築と全国的な普及を目指す。
4 「医学部学生用動画教材の作製とそれを用いた多学部合同実習の設計」 岩手医科大学医学部
医学教育学講座
医学教育学分野
特任講師
相澤 純
本学医学部における漢方医学教育拡充のため、すみやかに実行可能で効果的な方法として、動画を用いた教材を作製する。日本漢方医学教育協議会が作成した教育プログラ ムをもとに、15分の動画と5分の演習を組み合わせ、90分4回の授業で学修できる教材とする。講師は、本学と関係がある漢方専門医に依頼する。作成した教材は、医学教 育学講座の講義内で使用し、評価と改善を行う。 更に、医、歯、薬、看護の各学部から選抜した学生に対し、症例ベースのグループ実習を設計し、試行する。その際、事前学習課題として上 記医学部講義用教材を用い、他学部学生への汎用性を確認する。実習実施後に効果と問題点を精査し、正課化にむけた検討を行う。
グループ研究助成:2件/3件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「Web投票を活用した舌画像データベースによる標準化舌診自己学習」 山口大学医学部附属病院
漢方診療部
准教授
瀬川 誠
舌診は漢方的病態を判断する重要な診断手法であるが、初学者にとってその診断技術の習得は容易ではない。その理由は客観化された舌診所見の診断基準が存在せず、舌診 の教育手法が標準化されていないためである。そのため、初学者が漢方医学を学ぶ上での負担となっている。 本研究は、複数の大学教育機関が連携して属性が客観的評価された舌画像を用いる舌診断学習システム(e-ラーニングシステム)の開発を行い、標準化された舌診教育の実 施を目指す研究である。情報通信技術(ICT)を活用することで、時間や場所を選ばずに学習できるため、漢方教育の標準化と普及に貢献ができることが期待される。
2 「医学生を対象とした漢方医学教育入門編の開発と検証」 神奈川県立産業技術
総合研究所
特任研究員
伊藤 亜希
COVID-19により世界中で対面式授業からOnline授業に移行している。Online授業では視聴のみの受動的な授業に終わらせない工夫が必要とされ、今まで以上に反転授業や 協調学習などが効果的といわれている。Online授業における不満として学生はWeb教材の分かりにくさや課題の多さをあげている。特に漢方医学は用語が分かりにくいとさ れる。そこで我々はこれまでに実施した反転授業の検証から、分かりやすさを重視するためデジタルネイティブ世代といわれる学生目線を視野に入れた双方向性非同期型e ラーニングを新規に開発する。その上で、授業で完結できるような双方向性同期型Online授業の検証を実施する。

2019年度「漢方医学教育研究助成」採択決定者一覧

一般研究助成:6件/12件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「専門医の経験知に基づくVR漢方医学的診察教材の開発と検証」 富山大学大学院
医学薬学研究部
成人看護学Ⅰ
准教授
山田 理絵
漢方医学的診察は専門医の経験知に依拠する。専門医は経験知に基づき的確な診察を行うが、経験知の浅い者は有害事象や服薬アドヒアランスの低下をもたらす。本研究は、専門医の経験知に基づく診察方法を可視化し、VR漢方医学的診察教材の開発と検証を行うことで、医学生の診察能力の向上を目的とする。初年度は診察方法の可視化にあたり、模擬患者診察時の1専門医の視線計測、2診察場面の観察、3診察後に面接を行う。次年度は可視化した診察方法を基にVR教材を開発する。また、医学生を介入群と対照群の2群に割り付け、介入群は開発したVR教材を視聴、対照群は従来の漢方診療の映像教材を視聴し、介入前後で専門医2名が医学生の診察能力を検討する。
2 「症候別アルゴリズムを用いた漢方医学教育ツールの開発」 筑波大学
医学医療系
教授
前野 哲博
日常よく遭遇する症候・病態について、コンピュータやスマートフォンの画面に表示された質問に沿って情報を入力することで、短時間でファーストチョイスの方剤を 表示する教育ツールを開発する。忙しい臨床の中ですばやく適切な漢方方剤の選択が可能となることで、初学者が診療に漢方を取り入れるハードルを下げることができ る。また、各画面には解説欄を設け、治療目標、構成生薬、セカンドチョイスなどの情報を表示するので、ベッドサイドで繰り返し使うたびに、実際の診療と結びつけ ながら体系的な知識を修得できる。開発した教育ツールは、インターネット上で広く公開するとともに、使用前後にアンケート調査を行い、その教育効果を検証する。
3 「女性ヘルスケアを対象とした漢方卒後教育カリキュラム作成」 近畿大学
東洋医学研究所
所長・教授
武田 卓
女性は一生のなかで月経・妊娠・更年期といった、劇的な内分泌環境の変化をとげ、男性と比較して心身の不調が多く、女性活躍促進のうえでも適切な対応が必要であ る。産婦人科は古くから女性不定愁訴等に対して、漢方治療を多用してきた診療科といえる。初期研修医制度において産婦人科研修が必修化された。このことは、ホル モン剤と違い漢方薬は臨床各科で容易に処方可能であることから、将来の女性ヘルスケアにおける漢方治療習得の絶好の機会と考えられる。そこで、臨床研修指定病院 所属の産婦人科医へのアンケート調査をもとに、漢方卒後教育カリキュラムを作成し、産婦人科研修時の初期研修医を対象に教育を行い、その有効性を評価する。
4 「東洋医学サークル学生が主体となるアクティブラーニングを用いた漢方医学教育 法の開発」 大分大学医学部
医学教育センター
教授
中川 幹子
本学の医学生の漢方サークル「東洋医学研究会」は指導者のもと、学内外で勉強会を開催し、独自に作成したテキストを用いて学生間の屋根瓦式教育を実践している。 本研究では、現在4年次生対象の東洋医学講義(11コマ)の内、2コマの授業を東洋医学研究会の学生に企画担当させ、腹診シミュレーターや鍼灸の実技等のアクティブ ラーニングの手法を取り入れて実施するカリキュラムを新たに構築する。講義前後で学生アンケートを実施し、試験結果とも対比しながら、学生自身による東洋医学教 育の効果について検討する。
5 「臨床研修医コミュニケーション能力に対する漢方医学研修の効果」 金沢大学附属病院
漢方医学科
特任准教授
小川 恵子
漢方医学的概念を学ぶことによって現代医学とは異なった視点で患者さんを理解できる。漢方医学的診察では、望診で顔色や動作から、聞診で声の大きさや質などか ら、病態を推察する。問診では傾聴を重視し、切診では診察と同時に非言語的コミュニケーションを図る。以上より、漢方医学臨床実習によってコミュニケーション能 力が向上すると経験的に言われているが、検証は十分でない。そこで本研究では、漢方医学研修が初期臨床研修医のコミュニケーション能力に及ぼす影響を検討するた めに、金沢大学附属病院漢方医学科で臨床実習した初期研修医を対象に、研修前後に、研修医自己評価アンケートと、患者満足度調査を行い、比較検討することを目的 とする。
6 「漢方薬の薬理学的特性を理解するための学生実習の構築」 杏林大学
医学部薬理学教室
教授
櫻井 裕之
医学生への漢方医学教育に漢方薬の薬理的な特徴を実体験させるプログラムは未だ開発されていない。本申請では、医学部や薬学部の薬理学実習で広く行われている横 紋筋や平滑筋の収縮を評価する実験系に筋肉弛緩作用が知られている芍薬甘草湯を適用し、その効果を、筋肉の収縮を抑制する西洋薬であるアトロピンなどと比較する ことにより、漢方薬が現代医学の薬理学により評価できることを実体験させる実習システムの構築を目指す。芍薬、甘草、そして芍薬甘草湯、それぞれの効果から、複 数成分の足し合わせで薬効を出すという漢方薬の作用メカニズムが理解でき、漢方薬にプラセボを超えた真の薬効があることが実感できるであろう。
グループ研究助成:1件/4件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「病院間連携による卒後漢方教育へのe-learningの導入」 東海大学医学部
専門診療学系漢方医学
教授
新井 信
本研究の目的は、神奈川県4大学医学部FDフォーラムで、小規模な臨床研修病院でも実施可能な卒後漢方教育システムを開発し、評価することである。方法は、初期研 修で学ぶべき10処方を選定した後、音声ガイドのついた処方解説、臨床症例、確認問題をコンテンツとして、1処方を約10分で受講できるスライドを作成し、漢方e- learningの教材とする。これを学習管理システムを用いてWeb上で限定公開し、神奈川県内で卒後教育に病院間連携を導入している組織の教育プログラムに試験的に組 み込む。対象は卒後1、2年目の研修医で、e-learning修了後に総括的な講義、確認用の演習問題、模擬患者の診察実習などを実施する。評価は、学習者へのアンケート と演習結果で行う。

2018年度「漢方医学教育研究助成」採択決定者一覧

一般研究助成:6件/14件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「iOSアプリを利用した重要処方および漢方診断推論学習法の開発」 三重大学附属病院
漢方外来(麻酔科)
助教
高村 光幸
西洋医学では、経験豊富な臨床医の診断思考プロセスを学習させる「診断推論」の方法論が議論されてきた。漢方医学においても、この「診断推論」の考えを漢方教育に応用することで、医学生や研修医においても証の認識が可能になると考えられる。そのため、エキス化されている頻用重要処方と、分析的推論に用いる基本的な診断方法の重要項目を、日本東洋医学会編纂の出版物等を元に選定し、これらに直結した思考プロセスを学ばせる教育方法として、短時間に繰り返し利用でき、効率的で好奇心をそそるような、iOSを用いた端末(iPadやiPhone)における漢方診断推論学習フォーマットとしてのアプリ作成を試みたいと考える。
2 「漢方Problem Based Learning(PBL)を基にした学術発表により得られる 医学生の学び」 東北大学病院
総合地域医療教育支援部・漢方内科
准教授
高山 真
漢方 Problem Based Learning(PBL)を実践し教育効果を明らかにするとともに、内容を発展させて学術発表につなげ、その経験がもたらす学びを明らかにする。1年目は医学部 2年次のPBLに漢方も参画し漢方PBLを実施し、アンケートにより意識変化と教育効果を明らかにする。2年目は発表内容を発展させ学術総会等での学生発表につなげ、継続的に論文作成を支援し学術誌に投稿する。最後に一連の経験から得られた学びを医学生にインタビューしまとめる。本研究により医学教育に漢方PBLという一つの教育方法を提示する。さらに学生時代の発表や論文投稿の経験は、漢方に関する研究探求心の涵養に寄与することを示す。
3 「体験型漢方実習の教育効果:質問紙法による検証」 群馬大学大学院
医学系研究科 総合医療学
講師
佐藤 浩子
漢方は学生が学習する上で、分かりにくいと捉えられることが多い。聞きなれない漢⽅用語の羅列はあたかも異言語のように受け取られる。本学では、分かりにくい漢⽅ を、医学生に分かりやすく習得させるため、ロールプレイ、TBLなどの体験型教育を行っている。このような体験型教育の教育効果を検証するため、以下を検討する。①実 習後の漢⽅理解度が向上したか、実習前後のテストで評価する。②「将来漢⽅を勉強したい」、あるいは「将来、日常診療において漢⽅も治療手段の一つと考えられる」な ど、「群馬大学で受けた漢⽅医学教育により、漢⽅への関心が変容したかどうか」を評価するため、質問紙を作成し、統計学的に検証する。
4 「医学、歯学、看護学で連携した漢方教育カリキュラムの開発」 鹿児島大学
医歯学総合研究科
国際島嶼医療学
講師
網谷 真理恵
医学教育モデル・コア・カリキュラムに漢方教育が導入され、国内全ての医学科において漢方教育は実施されるようになった。一方で、歯学、看護学のモデル・コア・カリキュラムにも和漢薬について記載され、歯学部や看護学においても漢方教育カリキュラムが求められている。そのため、漢方医学の指導にあたり、医学部、歯学部、保健学科の連携した体制が必要となる。本研究では、医学部、歯学部、保健学科の漢方教育の現状およびニーズを調査する。調査データを用いカリキュラムに反映させることで、少ない指導者でも効果的な指導ができ、さらに他教育施設でも実践可能な連携カリキュラムを構築することを目的とする。
5 「横浜市立大学初期研修医を対象にした、漢方e-learningの活用による、漢方・東洋医学の教育効果・有効性の検討」 横浜市立大学
医学部循環器・腎臓・
高血圧内科学
准教授
石上 友章
初期臨床研修病院である公立大学法人横浜市立大学附属病院において、『漢方・東洋医学』e-learning教材を用いて、初期臨床研修医を対象に『漢方・東洋医学』教育の機会を提供する。研修医には、e-learning教材に自由にアクセスし閲覧する権限を付与する。『漢方・東洋医学』e-learning教材の提供前後に、アンケート調査を行い、理解度問題正答率などを比較検討するとともに、病院のDPCデータ・処方箋データの変化を比較検討し、『漢方・東洋医学』e-learning教材の、初期臨床研修医教育における有効性と限界を明らかにし、さらにはその解決法を検討する。
6 「アクティブラーニングを利用した授業での効果的な指導法の確立―反転授業を利用した学生のタイプ別の漢方の理解度および興味喚起の阻害因子の検討」 千葉大学
大学院 医学研究院
和漢診療学
准教授
並木 隆雄
アクティブラーニングは、受け身の教育ではなく学生が主体性をもった教育であるため、医学部生学習には最適な学習法の一つと考えられる。2018 年実施した授業で指定コンテンツ の修了群44名、未修了群が40名で、e-learning中の試験の成績を比較した結果、未修了群で修了群と比較し1回終了後の成績不良(7点満点 6.50 vs 5.79)。修了者は2回目も知識定着の伸び悩みを認めた(6.50 vs 6.69)。反転授業のメリットを伸ばし、教師のスキルを向上させるための課題の抽出とその効果の検証をする。即ち、漢方に対する興味度または他の因子で学生のタイプを分け 、どのような工夫や方法が最適な方法かを検討する。さらに2年目は、それらの教育を授業に取り入れて検証する。
グループ研究助成:2件/2件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「薬理学ロールプレイを活用した漢方医学教育の試み」 宮崎大学
医学部看護学科
臨床薬理学
教授
柳田 俊彦
本研究は、実践的な薬物治療のアクティブラーニング『薬理学ロールプレイ』を漢⽅医学教育に活⽤し、その有効性を検討する試みである。本研究では、教育的に様々なバックグラウンドを有する国公私⽴の医学部8⼤学(全国医学部の10分の1モデル)において、共通プログラムとして漢⽅薬の症例を⽤いた『薬理学ロールプレイ』を実施し、その有効性を検討する。対象となる医学⽣は、各⼤学のカリキュラムに準じて、学年や受けている漢⽅教育も様々であるが、その状況を分析しつつ、どのような事前学習を組み合わせることで有効性が上がるかについても合わせて検討する。
2 「漢方医学教育向上のためのより効果的な腹診シミュレータ活用法」 明治薬科大学
臨床漢方研究室
教授
矢久保 修嗣
漢方医学における腹診は近代西洋医学的な腹部診察と異なるユニーク診察法であり、学生の漢方医学に対する興味を惹起し、学習のモチベーションを高める可能性は大きい。漢方医学教育の現場では、腹診シミュレータを大学の教員が活用し、教育の質の向上を望む声も多い。本研究では、腹診シミュレータ使用の実態を調査し、この教育方法に関して『腹診シミュレータ教育マニュアル』の作成を検討する。この教育を教員に研修会などで指導するなかで、各施設に即したマニュアルに改訂し教育システムを推進していく。本研究により大学における腹診シミュレータを活用した実習が充実することは、医学生の漢方医学教育に対する興味の増幅や理解を深めるばかりでなく、今後の漢方医学教育の向上と標準化に貢献できるものと確信している。

2017年度「漢方医学教育研究助成」採択決定者一覧

一般研究助成:5件/22件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「凡用性の高い効果的な漢方医学モデル授業の開発研究」 九州大学大学院
医学研究院 地域医療
教育ユニット
准教授
貝沼 茂三郎
2 「アクティブラーニングを取り入れた漢方医学教育」 信州大学医学部附属病院
信州がんセンター緩和部門
教授
間宮 敬子
3 「臨床推論の手法を応用した漢方教育法の開発、学生・初学者を対象とした漢方処方選択及び、学習ツールの確立」 東海大学医学部
専門診療学系
漢方医学
講師
中田 佳延
4 「医学部・薬学部学生によるPBL課題作成を通じた協同的学習プログラムの創出と漢方医学教育の再定義」 日本医科大学
医学教育センター
教授
藤倉 輝道
5 「漢方医学的病態診断の修得を目的としたトレーニングモジュールの確立」 富山大学大学院
医学薬学研究部
和漢診療学講座
助教(診療講師)
野上 達也
グループ研究助成:2件/3件
No. 研究題目 施設名・所属(役職) 申請者
(代表)
研究要旨
1 「漢方教育におけるWeb評価システムの開発」 広島大学
総合内科・総合診療科
教授
田妻 進
2 「大学での漢方医学教育におけるeラーニングを用いた反転授業の検証」 地方独立行政法人
神奈川県立産業技術
総合研究所
人材育成部
特任研究員
伊藤 亜希