日本漢方医学教育振興財団 評議員
日本心療内科学会 理事長
中村学園大学 学長
また、補剤といわれる補中益気湯、十全大補湯や六君子湯を使って、免疫機能についてマウスを用いて検討した。拘束ストレスの実験系を用いて補剤の免疫機能に及ぼす作用について検討したところ、補剤はストレスによる免疫能の低下を予防し、さらに低下した免疫能を回復させる作用を有することが明らかとなった。老齢マウス、担癌マウスでも免疫機能の回復傾向がみられた。
福岡医師漢方研究会は毎月行われており、その世話人となり、高山宏世先生や後藤哲也先生と一緒に勉強会を開いた。光原社の砂押吉良様のおかげで、“日常診療に役立つ漢方の考え方と使い方”という本を三人共著で出版できた(写真)。
昭和63(1988)年九州大学心療内科に戻り、心身医学の研究および心身症の診療を行ってきた。漢方薬は、1.機能性の疾患、2.現代医学的治療に反応の乏しいもの、3.現代医学的治療で副作用をあらわすもの、4.現代医学的治療を行い、検査所見で改善した後も愁訴が残るもの、5.検査上正常でも愁訴があるもの、6.虚弱体質者、高齢者の諸種の愁訴等に対して適応されている。このように漢方薬は、さまざまな生体調節作用があり、心身症に応用されることが多い。診療では腰痛患者に牛車腎気丸、咽喉頭違和感に半夏厚朴湯が著効した例があり、そのほかにも漢方薬を使用した。
ところで、日本東洋心身医学研究会は心療内科医が中心に漢方を勉強する目的で昭和57年(1982年)設立された。2022年まで57回開催されている。1999年35回日本東洋心身医学研究会学術集会会長を務めた。
ストレス・高齢化社会を迎えて、西洋医学だけでは対応しきれないさまざまな不定愁訴を訴える患者が増えている。漢方薬は全身の調節作用を持っており、このような患者には有効な治療手段ともなる。一方、漢方薬の効果や作用機序については、明らかにされてきているが、さらに基礎・臨床研究を押し進めることが期待される。