新潟大学大学院医歯学総合研究科医学教育センター 准教授
新潟大学脳研究所・医歯学総合病院脳神経内科学分野 准教授
私と漢方医学との出会いは、新潟大学での医学生時代に三重県で行われた『医学生のための漢方医学セミナー』に参加し、漢方医学の基礎を身につける機会をいただいたのが最初です。全国から多くの講師と医学生が集い、基礎から臨床まで、幅広く、漢方医学の初歩を学びました。その熱量の高さに純粋に驚いたことを鮮烈に覚えています。特に、中医学という学問の深さに感銘を受けました。西洋医学と東洋医学は、医学の両輪として修めなければならないことを教えていただきました。
卒業後、内科研修を経て、新潟大学脳研究所脳神経内科に入局した後は、西洋医学を中心に勉強して参りましたが、半年間ほど、新潟大学脳神経内科と関連した施設である富山県立中央病院脳神経内科で勤務する機会をいただきました。この折、富山の地では、漢方医学がとても重要であることを学びました。本格的に、神経内科専門医として、認知症をはじめとした神経疾患を診察する機会を経て、漢方薬 (抑肝散・五苓散など) の重要性を教えていただきました。とてもマイルドに患者さんを笑顔にする力を目の当たりにし、漢方医学の普及した「日本」で神経疾患を診療できることに感謝しております。神経疾患の診療において、「Kampo」が日本だけでなく海外でも普及する時代が来るとよいと感じています。このように医師になってからは、臨床的な観点から漢方医学の有用性を学んで参りました。
2019年から新潟大学医学教育センターの業務を兼務し、医学教育のあり方を考える機会をいただきました。新潟大学の医学生は、新潟大学出身の須永隆夫先生 (木戸クリニック・日本東洋医学会・新潟県部会顧問) による体験型授業に参加します。漢方医学の効果に驚き、漢方医学を同級生と共に学ぶことができます。須永先生による漢方医学の授業は医学生にとても人気があります。一方で、医学教育の全般を概観すれば、漢方医学教育の体系的な構築が不十分であること、教員リソースの不足が大きな課題となっています。
今、日本の医学教育の現場で、西洋医学と東洋医学を体系的に修める機会を構築すること、看護系・薬学系・福祉系の学生の皆様と共に学ぶ多職種連携教育に波及させること、さらには漢方医学を海外へ普及させる道すじを模索することが求められていると感じています。未来の若者が日本発の「Japanese Kampo」を世界標準にしてくれることを夢見ながら、地道な活動を続けていきたいと思います