富山大学学術研究部医学系和漢診療学講座教授
私が富山医科薬科大学医学部6年生時、和漢診療科の先生方が神経内科専門医であったことから神経内科の授業を担当してくれました。私はその先生方の講義にとても感動し、東西医学の融合を目指して卒後すぐに和漢診療学講座に入局しました。卒後2年目から2年間、沼津市立病院で内科の研修を行いましたが、肝癌、肝硬変の末期患者さんを多く担当させていただき、仮に抗ウイルス効果を認めなくても肝癌発症を予防する意味ではC型慢性肝炎患者はインターフェロン(IFN)治療を一度は行うべきだと考えておりました。4年目からは飯塚病院漢方診療科で研修させていただくこととなりましたが、飯塚病院漢方診療科は当時スタッフも少なかったため、入院中の患者さんはほとんど主治医として担当させていただきました。また当時部長だった三潴忠道先生からは漢方医学の基礎に関する講義も直接ご指導いただきました。そんな中、C型慢性肝炎の診断でIFN治療中に鬱状態になり治療を中断した方が受診されました。私は沼津時代の経験からIFNの再治療をお勧めしましたが、前回の副作用のことが忘れられず、1年間ほど漢方治療を行いながら経過観察していました。すると患者さんから体調がよくなったので漢方治療併用によるIFN治療をやりたいとの申し出があり、麻黄湯併用によるIFN治療を行なったところ完全著効となりました。『私がやりたいことはこれだ!!』と思いました。この症例をきっかけとして漢方に傾倒するようになり、C型慢性肝炎に対する麻黄湯とIFN治療との併用療法に関する研究を開始することとなりました。 しかしなかなか症例登録が進まない中、併用療法を受けた患者さんが自身の体験談を友の会に寄稿してくれることになり、それが新聞記者の方の目に留まり、併用療法が新聞に掲載されることになりました。その反響もあり、関東や関西から併用治療を希望される患者さんが多数受診され、臨床研究で学位を取得することができました。この経験からこれからの自分の仕事は漢方の素晴らしさを少しでも多くの人に広めることだと考えるようになりました。
私一人の力では難しい事でも周りの方々のサポートをいただき、漢方の臨床、研究、教育を進めて参りました。現在、富山大学和漢診療学講座の三代目教授を拝命しておりますが、卒前卒後の漢方医学教育を含めて後進の育成や漢方の臨床研究をさらに推進し、日本漢方の発展に貢献することができればと考えております。今後ともご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。